個人団体敵味方-ちはやふる19巻感想

ちはやふる19巻の感想です。

19巻は最初読んだときいまいち入り込めなかったのですが
鑑賞のポイントがいくつか分かって
いつもどおりに(いつも以上に)楽しめました。

そのあたりを中心に書いていきたいと思います。



◆個人団体敵味方◆


ちはやふる(19) (Be・Loveコミックス)


・団体戦!


準々決勝の鑑賞ポイントその1
「団体戦みたいだな」という原田先生の言葉どおり
本気で「これは団体戦なんだ」と思って読んでみる。

具体的にどういうことかというと
千早太一広史さん原田先生の4人を『チーム白波会』として
『チーム白波会』が準々決勝で何勝できるのかという視点を持って
白波会4人に肩入れして読んでみるのが良いということです。
(当たり前にこう読んだ人の方がむしろ多いかと思いますが)


上の視点で物語を見てみましょう。

まずは、組み合わせ。

広史さんVS新の新旧名人候補筆頭対決

原田先生VS村尾さんのいぶし銀対決

太一VS須藤くんの地道でプライド高い部長対決

千早VS猪熊さんのスーパー聴力対決

どの対決も競りそうです。


最初にフォーカスされるのは千早VS猪熊さん。

千早は理音ちゃんから吸収した音の高低による聞き分けにより
元クイーンから開始早々に3連取!

しかし相手は元クイーン。
お手つきをしたところを2連取で逆転される。

千早も負けじと「わすれ」を取み同点に持ち込んだ。

一進一退の攻防
・・・と思いきや
猪熊さんに聴き分けの難しい「あ」札2枚を含め
4枚連取されてしまう。

猪熊さんはもともと音の高低だけでなく
様々な響きを聞き取れることが発覚。
しかも札移動をしない猪熊さんのかるたはやりづらい。

さあ千早は猪熊さんに食らいついていくことができるのか!


一方、原田先生は
復活した村尾さんに圧倒されている。
すでに10枚差。

広史さんも
毎日500回の素振りで身体能力が上がり
加速力を身につけた新に苦戦中。

太一も須藤くんの精神攻撃をかわし
エロムくんの技を試し健闘しつつも
須藤くんに5枚差つけられている。

チーム白波会、危うしっ!


この場面で、チームを救うのが
リーダー・原田先生。
「間に合ったーッ」の一言で
全員に‘攻めろ’というメッセージを送る。

これで4人の気持ちが1つになり
全員で一気に反転攻勢に出る。
接戦に持ち込み、結果に結びつく。


このように『チーム白波会』という視点で読んでみたところ
個々の試合をぶつぎりにして読んだときには見えてこない
大局的な流れが感じられてかなり面白くなりました。

19巻は客観的な視点で読むタイプの人にとっては
入り込みづらかったのではないかと思います。
あえて白波会に入れ込んで読んでみてください。



・スピード感!

鑑賞ポイントその2
準決勝はとばして読む。
その後はゆっくり読む。

準決勝が絵が描かれているのは
九十九首から百一首。
ちょうど100頁です。

この100頁
ものすごいスピード感をもって描かれているんです。

セリフをほぼ無視して読んでもストーリーを追えるくらい
画やコマが何のシーンなのか分かりやすい。

しかもセリフや独白も
視線が次のコマに移るのを阻害しないよう
とてもシンプルに配置されています。

また画を単体で見てもとても迫力がある。
全体的に躍動感のある画が多いのですが
千早VS猪熊さんの2枚目「ひさ」が読まれたコマなんて
格闘漫画かと思うほどの迫力です。

このスピード感をぜひ味わってほしいです。

というわけで
準決勝は文字をほとんど飛ばすくらいのスピードで
勢いをつけて読んでみてください。


逆に、準決勝後の百二首と百三首は
出来る限りゆっくり読んでみると良いと思います。

試合後の余韻を味わうためにもそうだし
千早と太一の‘初めての試合’を
厳かな気持ちで読むためにも
あせらずに気持ちを入れて読むのが吉です。


ぼくはむしろ前半をゆっくり
後半を速く読んでしまったので
大失敗でした。
特に決勝が始まる前の「礼」の場面あたりは
一回記憶を消して
今度はゆっくりのペースで読み直したいものです



・個人戦は団体戦

18巻以来、各所で疑問視されている「個人戦は団体戦」

ぼくは結構すんなり受け入れられました。

まずは一番物議を醸した
須藤くんと戦ったときの肉まんくんの思いを
どう捉えるかですが

‘味方の誰かを勝たせるため
 目の前の相手を疲れさせるんだ’
という思いだけと考えると
なんだか捨石作戦みたいで
嫌な感じです。

でも肉まんくんは
‘勝つのは少し厳しいかもしれない
 でも少なくとも味方の誰かが倒してくれる
 だから最後まで頑張る意味はあるんだ’
という風に考えていますよね。

自分の勝ちが相当厳しい状況になっても
モチベーションを高く持つために
‘もし負けても仲間のためになる’と思い直して
諦めそうになってしまう淡白な自分を奮い立たせた
という風に捉えてみても良いのではないでしょうか。

そう考えると肉まんくんの発言はアリじゃないですか?


また、城山くん戦で広史さんと原田先生に励まされた太一が
個人戦は団体戦と感じたのも
仲間と一緒に戦っていると思うことで
自分を支えるものがよりいっそう強くなる
といったところではないでしょうか。

仲間と一緒に戦っているんだという意識。
これが原田先生の言うところの「団体戦」なのだと思います。

個人的な話ですが
テニスのシングルの大会に仲間と一緒に出たときや
勉強仲間と一緒に試験を受けたとき
個人戦なのに団体戦のように感じた経験があります。


さて、「個人戦は団体戦」をこのように考えたとき
今度は九十九首の太一のセリフ
「隣の席に千早がいても自分の試合で手いっぱいだよ」
「手いっぱいでいい」
が真逆のことを言っているように思えます。


ここはどう考えればよいのでしょうか。


要は、「中庸」なんだと思います。

個人戦は当然、自分個人の試合。

だけど、団体戦のように仲間と共に戦っている意識を持って
試合に臨むことで心がより強くなる。

とはいえ、周りを気にしすぎるのではなく
まずは目の前の相手に集中!

というバランスが大事なのだということだと思います。


拙い説明ですが
巷で疑問視されている点については
ひととおり意見を提示できたのでは、と思います。



・敵と味方

太一と須藤くん
千早と猪熊さん

敵同士なんだけど
同じ感覚を持って戦っていることにお互いが気づき
「敵なんていないみたい」になっていますよね。

太一と須藤くんは、ヒョロくんの勝利を見て
それぞれ触発されたとき。
千早と猪熊さんは、空札「もろ」が読まれ
「もも」が風圧で動いた際に
お互いの実力を認め合ったとき。
(千早⇒猪熊さんはもう少し前ですが)

このとき敵ながらお互いに共感しています。



逆に、味方なのに敵、という場面もあります。

広史さんは仮に太一が準決勝の相手だったら
全力でつぶすと言い
太一は千早を前に誰よりも本気で
千早対策を練っています。

味方こそ一番敵視していると見ることができるでしょう。


だいーーぶ前の記事で
かるたの世界の特殊性として
あるときは味方あるときは敵、ということが頻繁に起こる
というようなことを書いた気がするんですが
19巻ではまさにかるたの世界の面白さが出ていると思いました。
(この記事、どこで書いたか分かる人がいたらコメントください。)


個人戦のようで団体戦のよう。
敵のようで味方のよう。
この場にいる人みんなが
そんな不思議な関係。
妙な一体感のある関係。

19巻はそのあたりも描かれているのかなと思いました。



・その他の場面

猪熊さんの「欲」は好きですねー。

情熱ではなくて欲だというのは
「かるたを愛している」というよりも
私はかるたが好きなんだ」という思いなのでしょう。
非常にアバウトな言い方ですが。

そして、ここには深いテーマが描かれていますね。

子どもを育てる親の物語。
自分の人生をどう生きるかというテーマ。

人生半分も終わっていないうちから
子供に人生を託してしまうのではなく
自分のやりたいことを諦めずにやる。
それが子供をのびのびさせることにもつながる。

現実的にはなかなか難しいのでしょうが
この生き方はかっこいいですよね。


ちなみにどうでもいいんですが
「猪熊六段」という文字を見るたびに
「わしゃ八段ぢゃ」というセリフを思い出すのは
ぼくだけでしょうか(ネタが古い)



新が村尾さんVS太一の結果に
悔しがりながら喜んでいるところは大好きです。

小さくガッツポーズしている新は
ええ子やのぉと思ってしまいます。

この場面でもそうなんですが
19巻は回想シーンの使い方が非常に巧いですね!


そうそう、太一に関して。

村尾さんに勝ったのはもうちょい説明が必要かな、と思います。

少なくとも守りがるたが合っていたという点は
後付けでもいいから何か説明がほしいところ。
できれば伏線を張っていてほしいところ。
20巻に少し期待しています。

それはそうと
準決勝まで残ったのは不思議ではないと考えています。

太一はここへきて突然の急成長を遂げたのではなくて
もともと実力はあったと描かれています。

一年の秋に規定上A級の条件をクリア(7巻)
二年の春には原田先生から
「もうA級の実力があるよ」と言われています(10巻)

エロムくんとの試合を勝ちきったことで
気負いという呪縛から(完全にではないけれども)
解き放たれて実力どおりのものが
出せるようになったのだと思います。



さて、一番熱いシーンは太一がついに
千早と公式戦で相見える場面ですが
例によって言葉はいらないと思うので割愛します。

~個人団体敵味方~




漫画『ちはやふる』

 1巻~4巻(一首~二十三首) 各話感想 目次

 5巻~8巻(二十四首~四十七首) 各話感想 目次

 9巻~12巻(四十八首~六十八首) 各話感想 目次


アニメ『ちはやふる』

 アニメ『ちはやふる』 各回感想 目次

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この記事へのコメント

千早太夫
2013年01月15日 12:59
こんにちは。ストーカーの千早太夫です(笑)。
神場さん、何を隠そうそれは、「敵キャラが魅力的な漫画は・・」10巻の感想で書かれたことですよ!

ヒョロ君のカッコよさに触れて、スポーツものはバトルものより敵キャラに感情移入しやすい・・・という分析から、例えば千早がA級で原田先生と戦うことになる可能性もあり、敵・味方が区別されにくいという意味のことを書かれてます。

おっしゃるとおり、19巻のスピード感は凄かったです。
特に猪熊戦の場面。あれは100首でしたか、千早がセイムなど惜しい取りを繰り返した後、ついに「ちは」を抜く場面、迫力と臨場感は素晴らしかった。まるで試合場に同席しているかのような感覚でした。
私は本編の大きな画面で見たので、尚更そう思ったのかもしれません。
2013年01月19日 12:03
千早太夫さん、ナイスストーキング(笑)!

そうでした!10巻の感想でしたね。喉につっかえた小骨が取れた気分です!

千早太夫さんの好きな場面ですが、「ち」のコマの迫力が凄いです。下から伸びてくる千早の手に引き込まれますね。

瑞穂
2013年01月20日 16:23
いつも楽しく拝見しています。2回目に書き込みさせて頂きます。

19巻部分は、本誌で(主に勝敗に)納得できなかった記憶があります。多分原因は神場さんの仰る「伏線」不足です。特に「太一-村田」「坪口-新」。坪口さんの相手は現名人より強いと言われるクイーンを(風邪ひいてたけど)倒した新だし、太一もずっとA級の実力があったとはいえA級にはかなり幅があるはずなので(A級より上はないから)、トップクラスに登り詰めるには時間が足りない気がします。太一は才能開花型ではなく努力を積み上げるタイプなので余計に。

それでも勝つ伏線がちゃんと張られていればいいんですけど、「基礎を固めた坪口さん」「太一の守りがるた」って接戦に持ち込む伏線にはなっても逆転までしちゃうには弱い気がして…その辺宜しければ神場さんのご意見をお聞きしたいです。

あと「個人戦は団体戦」、ずっと「個人戦は個人戦でしょ?」なんて思ってたんですが、モチベーション維持に繋がるという説明でハッとしました。確かに「団体戦という意識」が意味を持ってるんですね。

「情熱と欲」、私は理解しづらくて、一応こう解釈してました。情熱は「かるたが好き、強くなりたい」という純粋なかるた愛。一方、欲は「私は強いと思わせたい、全盛期はこれからだって示したい」というある種の自己中心的な欲求。「子供にとってこんな親でありたい、こう見られたい」もそう。ちょっと無理矢理ですかね?(笑)

長くなってしまい申し訳ありません。色々考えさせられて面白かったです。
2013年01月20日 23:14
瑞穂さん、おひさしぶりです!

「個人戦は団体戦」の部分、ちゃんと伝わるだろうかと心配だったのですが、瑞穂さんのコメントを読んで安心しました。

情熱と欲ですが、瑞穂さんと同じように捉えています。
情熱については瑞穂さんと全く同じ。欲についてですが、やはりかるたが好きで強くなりたい、のは変わらないのだけれども、力点が少し違うところにあるのかな、と思っています。
かるたが好きで、大好きで、楽しくて仕方ないんだ、そんなかるたで私は強いんだ、みんなにも分かってほしい、私は大好きなかるたで強いんだ!という感じなのかなぁと。超感覚的ですが。
記事ではちょっと舌足らずですね。なにかしら修正しようと思います。
子供にこう見られたいというのも、欲の中に入っていておかしくないと思います。

19巻の試合の点については、長くなりそうなので、後日。

2013年01月27日 00:05
瑞穂さん、追加のレスです!

19巻の試合については、記事にしようかと企んでます。もともと19巻感想に入れ込もうかと思っていたものをアレンジ中です。

結論だけ言うと、広史さんVS新は、ちょっとした演出でだいぶ納得感が違ったかなーと思います。
太一VS村尾さんは、伏線不足かつ演出不足な気がしました。

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