間で揺れ動く人たちーちはやふる21巻感想(1)

ちはやふる21巻感想です。
3ヶ月遅れだった20巻感想から少し進歩して
1か月半遅れでの感想アップです!(笑)

実はまだ1周程度しか読んでませんので
精度の点で不安なところがありますが
見切発車で感想書いてしまいます。

長いので分割します。



◆間で揺れ動く人たち◆


ちはやふる(21) (Be・Loveコミックス)


21巻では、2つの感情の間で
揺れ動く人たちが描かれています。

ちはやふるも巻数が進み物語が熟してきて
キャラクターの悩みがだんだんと高度になってきています。

そんな悩める人たちを中心に取り上げて
感想を書いていきます。

今日のところは、猪熊さんについて。



・GO MY WAY!!

子育てとかるたの両立に悩む猪熊さん。

子供のいるお母さんが
自分のやりたい道を諦めずに続けるという
19巻の話と同系統のテーマです。

たいしてコマ数割いていないのに
きれいに起承転結させるのは
短編のうまい末次さんの真骨頂。

この話って子育て経験のあるお母さんにとっては
当然共感できると思いますが
子育て経験がない人は
次のことを押さえておくと物語が楽しめると思います。

それは、子育てがとても孤独なものだということ。

仕事や勉強であれば、多かれ少なかれ
周りの人と苦しさを共有できたり
マニュアルがあってそれに沿って行動できるわけですが
子育ての場合それがないんです。

もちろん、何ヶ月になったらハイハイをして
1歳になったらおしゃべりするようになって
といったマニュアルはいくらでもありますが
子どもは一人一人の差が大きすぎる。
市販の子育てマニュアルでは対応できないことが多すぎる。
「この子」専用マニュアル、誰か作ってよ!ってところでしょう。

しかも、自分がこの子の人生まるごと抱えていて
どうやっても放り出すことが出来ないという責任の重さも
多くの仕事や勉強とは決定的に違います。

子供によって千差万別のため周りと共有できない部分が多い。
しかも自分とこの子だけの特別な関係で責任重大。
だから非常に孤独なんですね。

そして孤独ゆえになにか問題が起きても
自分の中に問題を抱えこむしかなかったりするんですよね。

こういった子育て中のお母さんの孤独を理解しておくと
猪熊さんの気持ちがクリアになっていきます。


猪熊さんの場合
かるたをやっているがために
子育てに支障を来たし始めている。

かるたって子育てより大事なの?と
自分のやりたいことなど捨てなければいけないのかと
問題を抱え込んでしまう。

ここ、「お母さんの孤独感」を理解しているかどうかで
感情移入度が大きく変わってくるはずです。



さて、思考が悪い方向に行ってしまったところで登場するのが
着物&かなちゃんのお母さんです。

ちはやふるの頻出アイテム「着物」
かるた選手にとって身近な(?)このアイテムが
授乳に便利なようになっていて
「お母さん」を助けることが判明する。

世の中、意外と都合よくできていて
悩みすぎなくて良いことを実感する。


そしてそのことを教えてくれた
かなちゃんのお母さんは
「お母さん」でありながらも
呉服屋経営という自分の道で
キラキラ(ガツガツ!)輝いている。

自分の道を進んで輝いている人が
実際に目の前にいるのです。

着物の機能とかなちゃんのお母さんによって
気の持ちようを変えることができた猪熊さんでした。



さて、ここまで書いておいてなんですが
そしてご存じの方も多いでしょうが
ぼくは子どもがいないどころか
結婚もしていないし
育児関係のボランティア等もしたことはないので
「お母さん」の気持ちを盛大に間違って捉えているかもしれません。
悪しからず(笑)



そして台無しついでにもう1つ
ちょっと語りたい点があります。



・順序が逆かも?!猪熊さん

19巻と21巻を比較してみます。

19巻
一度は引退し子育てに専念した身。
「親にも自分の道があること」を子供に見てもらう。
自分のためでもあり、子どものためにもなる。
だから、精一杯楽しむ!

21巻
かるたと子供、どちらを取るか。
こちらを立てればあちらが立たない。
でも、意外なところに強い味方はいるという事実や
自分以外にも子持ちで輝いているお母さんがいることに気付き
あらためてかるたの道を進む決意をする。

どちらも良い物語です。

ただ、21巻を読んでいて
ちょっと違和感ありませんでしたか??

なにが違和感かというと
猪熊さんは19巻で
「私のかるたは誰より私が楽しむかるた」
と言い切ったじゃないですか。

あれ、めちゃくちゃかっこよかったんです!!

子供がいても、否、子供がいるからこそ私は輝くんだ
と言い切ったからです。

子育てと自分の道という二律背反のものを
きれいに統合できたのです。
アウフヘーベンってやつです。

この境地に達したかっこよさを見た後だと
どうも21巻の猪熊さんの悩みには疑問を覚えるんです。

あれ?そこ、いったん答え出したじゃん
かっこよく言い切ったじゃん、って。

かるたが自分のためであり子供のためという宣言は
そもそもかるたと子育ての両立が困難であることを理解した上での答え。
その答えにたどりつけた人なら(19巻)
21巻の悩み――子育てとかるたどちらを取るかという悩みは
既にクリアしているはずなんです。

もちろん、いったんは自己解決していても
やはり子育てをするお母さんには
両立の難しさは常に付いて回る問題であり
いざ本格的に取り組んでみたら
また悩んでしまうということもあるのでしょう。

しかし、悩んでも答えは一緒なので
物語的には順序は逆の方が据わりが良いな、と。

21巻を読んで
猪熊さん、子育てとかるたの両立が
どれだけ大変かまではあまり考えずに
でかいこと言っちゃったのかなぁ・・
とちょっと残念な気持ちになったので。

回想シーンとかでこの話やってくれたらベストだったなぁ。
もしくは、繰り返し悩みながらもがいて答えを出していくというのも
一つですが登場回数的に無理か。

せっかくの良い話に水を差してしまう感想ですが
それだけ19巻の猪熊さんの物語が良かったということなんです。
(19巻の方を大きくとらえすぎたのかもしれません)



・師弟対決

閑話休題。


名人戦の挑戦者決定戦は、原田先生と新。
この対決、待ってましたー!!!!

原田先生と新の関係って
これまであまり描かれてきてないんですよね。


二人が顔を合わせている場面や
顔を合わせたはずの場面は
いくつもあるのに
ほとんどそのやり取りは描かれていない。

思い返してみれば小学生時代だって
新が原田先生と密接に絡んでいるシーンはない。

だから二人がお互いのことを
どのように思っているかって
実は全然分からないんです。


ですが、原田先生の東日本優勝の報せに
大きく心を動かされた様子なので
やはり新は原田先生のことを特別な存在だと思っているのは
間違いないようです。

原田先生だって
期間が短くとも
弟子となった子に対しては
深い愛情を注ぐタイプでしょうから
新のことを特別に思っているはずです。


二人がお互いにどんな感情を持っているのか
興味深いところです。


21巻感想(2)に続きます。

~間で揺れ動く人たち~




漫画『ちはやふる』

 1巻~4巻(一首~二十三首) 各話感想 目次

 5巻~8巻(二十四首~四十七首) 各話感想 目次

 9巻~12巻(四十八首~六十八首) 各話感想 目次


アニメ『ちはやふる』

 アニメ『ちはやふる』 各回感想 目次



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この記事へのコメント

大江山
2013年08月09日 13:21
初めまして!おじゃまします。
私は19巻と21巻の猪熊さん、リアル‼と思った口です。
人生コレと決めたものがあると、子ども自分の道か、じゃなくて両立というか両方とる!両方諦めない!な
んですよね。
でも両方から強く引っ張られて、その度に迷いが頭をかすめる…両方って私贅沢?とか。家族が協力的だと尚更。
すぎてしまえば両方から引っ張られてたなんて幸せな時間のはずなんですけど。
子どもの熱やら容赦なく張る胸やら
浦島な気分やら、子どもや周りの大人に助けられる瞬間やら、ホントにリアルに描かれてて、特にかなちゃんママのシーンは涙が出てきまし
た。
猪熊さんのこの順序は意外と練られたものかもしれないな~と主婦的には思います。
少女漫画としては深すぎかもしれませんが。

Rforest
2013年08月16日 22:04
久しぶりにおじゃまします。
私は猪熊さんの気持ちの揺れが非常にシンクロできましたので、お母さん目線からの感想を書かせてください。
私も職場復帰する時には、不安な反面、やるからにはやってやる!という気持ちでした。自分が普通に仕事をやっている時のイメージがしっかりまだ残っていたから。けれど、それを続ければ続けるほど、体力、精神力が削られていく時期がありました。子供の熱発で大事な当日の仕事が台無しになったり、家で書類をまとめようとしても、子供が泣いていると頭がまわらなかったり・・・。子供が大きくならないと仕事との両立は無理と感じることばかりでしたが、肩の力を抜いていいと思う時がやってきて、それからは随分手抜きママになってますが、仕事でも家庭でもなんとかやっていけてます。
子供は、本当に他に代えられない存在なのです。ただ、子供が見ているからこそ、つまんない大人になってられない、かっこいい大人でいたいと気張っていけるところもあります。欲張りなんですけどね。
ですので、猪熊さんの、19巻→21巻の流れは、ごくごく自然に起こりうることとして見ていられました。ただ、やっぱり経験してないと、実感はわかないところかもなー、とも思います。こんな心理描写も描けるなんて、先生も結婚されているんでしょうか。とにかく、面白く読み進められました。
2013年08月18日 23:48
大江山さん、はじめまして!

猪熊さんの悩み、子育て経験のないぼくでもリアルに感じられるくらいの描きっぷりでした。
そして、かなちゃんのお母さんの姿には感動でしたねー。呉服屋としてパワフルに働いている姿がまたいいですよね。
BELOVEは対象年齢が結構上らしいので(成人女性向けと聞きます)、こういう深いのもアリなんでしょうね。

2013年08月18日 23:53
Rforestさん、お久しぶりです!

たしかスラムダンクの話で鋭い指摘をして下さった以来ですね。

記事にも書きましたが、19巻→21巻のような流れは現実には起こると想像はしていましたが、実体験されているのですね。
ちなみに、末次先生も既婚で子持ちであるという情報をどこかで見た記憶があります。末次先生も実体験に基づくものかもしれませんね。

で、言葉足らずな記事になってしまったのですが、この記事で言いたかったのは、物語として、フィクションとしての据わりの良さなんです。
19巻の猪熊さんは、「子育てもかるたも両立してがんばるぞー」という意気込みがあるだけでなく、自分がかるたをやることが子供のためでもあるんだ、という考えに至っていて、「子供かかるたか」という二項対立の考えからもう抜け出している。とすると、21巻で「ねえそれ子供より大事なこと?」という二項対立の問題に逆戻りしてしまったことに違和感を覚えるのです。
現実世界では、心の中で一度解決した問題が再度湧き上がってきてしまうことは多々あります。
世の中まだまだ女性にやさしい仕組みにはなっていないため、こうと決めてもなかなかうまくいかないことも多いんだろうと思います。が、物語としては、19巻でかっこよく解決した問題である以上、その問題には逆戻りしない方が、19巻のかっこよさが保たれると思うのです。また、もし、逆戻りするのであれば、19巻のシーンを一部引用して、「あのとき決意したのに」という風に19巻を踏まえているひとコマがあったりするとスッキリするのになぁとかそんなことを考えました。
と、熱く語ってみましたが、19巻の猪熊さんの子育ての哲学にぼくが共感しすぎたせいで違和感があるのかもしれないですね。

そういえば、お子さんはいまもかるたを続けられていますか?(笑)

Rforest
2013年08月24日 17:44
こんにちは。
話の据わりの良さといえば、確かにそうかもしれないです。その方が、読者サイドも安心する流れというのは分かります。
あと、神場さんが書かれてるように、あのとき決意したのに、の一コマはすっきりすると思います。

ただ、私の読んだイメージとしてなんですが、19巻では猪熊さんの考えが結論まで至っていなかったと思うんです。とりあえず、試合に復帰してみた。情熱があるのね、と言われてましたが、どちらかというと、もとの自分の世界にもどるとっかかりのために試合に出てきた。そして、イメージ通りの試合展開でなかったときに、自分の本来の姿を自分の子供に重ね合わせて、小さい頃からの自分の楽しむかるたの原点を思い出しただけで、子供自身のことまで至っていない感じというか・・・。言葉にすると難しいですね。
とにかく、試合に出ているという高揚感から、子供個人をまだ見つめきれてない状態という感じですかね。
だから本格的に練習を始めた結果、現実とぶちあたり、悩む。子供とかるたが別物だったということに気づき、どちらが大事かという取捨選択をしそうになる。
そんな揺れ動いている時に、かなちゃんのお母さんの姿に励まされる。ようやく、お母さんが女王になってくる、と言い切れるほどかるたに目を向けることができ、同時に子供にとっても真剣にかるたを取る姿を見せることがプラスになると確信を持てた、という風に猪熊さんの中で考えが熟成されたととれたんですよね。起承転結がうまくまとまっているというか。
長々とすみません。
ところで、子供はすっかりかるたをしなくなりました(泣)。小学生になってから彼女なりに日々いそがしく過ごしています。私もその生活につられて、かるたを読んであげる余裕がなくなってしまい・・・。
せっかく良い文化なので、時々は時間をつくってやりたいですね(笑)。
神場@管理人
2013年09月08日 11:27
Rforestさん、返信が盛大に遅れてすいません!

子供のことまで考えて現役復帰したつもりの猪熊さんでしたが、実際には、試合中にぐずり出したらどう対策しようとか、かるたの練習と子育てを両方本気でやるためには肉体的・精神的にどう対策すれば良いだろう、と具体的に詰めて考えてはいなかった、ということですね。

Rforestさんのようにその流れで読むのがストレートでしょうね~。
ぼくは二律背反する問題を統合する物語が好きなため、そっち寄りの読み方に引きずられているかもしれません。

お子さんとのかるたは休止中ですか~。でも、小さい頃にやったことは大きくなっても忘れないですから、将来またかるたに興味を持たれるかもしれないですね!

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