間で揺れ動く人たちーちはやふる21巻感想(2)

21巻感想続きです。


◆間で揺れ動く人たち◆



前回猪熊さんについて語りました。
次は太一について。



・揺蕩う太一

猪熊さんが理想と現実の間で揺れていたのに対して
太一は‘自分のあり方’について揺れています。

明確な目的もないままに
修学旅行をサボって大会に出場するなんていう
らしくない行動を取ってみたり
小学生のころから慣れ親しんだ攻めがるたを取るか
自分の特性に合っていると思われる守りがるたを取るか
で悩んでみたり。
自分のあり方に迷っています。

これは太一が器用で恵まれていて何でもできる秀才だからでしょう。

何でもできてしまうがゆえに選択肢が多すぎて、
選択肢が多すぎるがゆえに
「これが自分だ」というものがない。

それで迷ってしまっている。


そんな揺蕩う太一と対照的な人々が
21巻では描かれています。

1人は、ポカ作こと小石川くん。

あだ名のとおりポカを繰り返します。
大事な試合の大事な場面でダブとセミダブとは
なかなかどうしてダメダメです。

このポカはかなり致命的な弱点。
飄々としてるポカ作くんだって
ほんとはお手つきなんてしたくはないはず。

なのに、ポカ作くんは
そんな弱点も含めて‘自分’だと言って
前向きに受け入れて
ポカをするごとに調子を上げていきます。

ダブをした直後に流れを持ってきて太一との枚数差を拡げるわ
7連取されて追いついかれそうになったところで
セミダブによって自ら逆転を招くわ
さらにセミダブをしたところで直後に
この試合最大のポイントとなる「ちはや」の札を確保して
また流れを引き寄せるわ。
この試合、完全にポカ作くんが試合を作っているのが分かります。
チャンスもピンチもポカ作くんが自ら引き寄せています。
太一の7連取という超見せ場が扱いが低いのは
そのことが描きたかったからでしょう。

このように、ポカ作くんはポカな自分と折り合いをつけています。


もう1人は、原田先生。

なにげにもうよいお年の原田先生は
長時間の試合には耐えられない身体。

原田先生はその身体と仲良しだと言います。

畳の上の格闘技である競技かるたにおいて
全盛期をとっくのとうに過ぎた肉体は
若者と渡り合っていくうえで
マイナス以外なにものでもないはずです。

トイレで膝の痛みを癒し
取った札を弟子に拾ってもらわないと
やっていけないレベル。

そんな状態にもかかわらず原田先生は
自分の身体をハンデとは思っているようには描かれてなくて
折り合いをつけて受け入れています。


このようにマイナス部分も込みで
自分と折り合いをつけているキャラクターたち。


太一がこの境地に達するには
まず、自分がどうありたいかをはっきりさせることが
必要になってくるでしょう。

なんのために誰のために勉強するのか
なんのために誰のためにかるたをするのか
そのあたりが見えてきて初めて
自分との折り合いを付けられるでしょう。



・なりきる太一

太一の課題について語ってきましたが
彼にはもう1つ課題があります。

それは、‘新コンプレックス’

新があんなに太一にデレているのに
太一の方は新を邪険にしたり恐れたり。
新を必要以上にデカい存在として捉えて。
新との間に越えられない壁を感じています。

5巻で「おれにもできるかな…中略…新に向かって行くことが」
と言っていました。
‘おれにもできるかな、新に勝つことが’ではなく
‘向かっていくことが’です。
ここでは向かっていくこと自体に迷っているんです。
ストーリー的には非常に熱いセリフですが
セリフのみを切り取って評価すると
一歩も二歩も引いたセリフだといえます。
それくらい新という存在はデカいんですね。

それからだいぶ成長した太一の「敵だよ」発言も同様。
17巻で新のことを「敵だよ」とつぶやくのですが
成長してなお、新に伝わるような声でライバル宣言できないあたり
どれだけデカい存在と認識しているかを
うかがい知ることができます。

このように太一は新に越えられない壁を感じています。

小学校からの幼馴染みでいまでも友達。
なのに、越えられないという思いを抱いてしまっている。

大事な友達とは対等な関係であるのが正常な関係です。
このコンプレックスは克服せねばなりません。

その足掛かりになるのが、21巻の「仮想・新」です!

人は得てして相手の考えていることが理解できないと
必要以上に相手のことを大きく捉えてしまうもの。

仮想・新を演じる過程で
新の考え方を体感し、少し理解するはずです。
21巻では特にそのような描写はありませんでしたが
今後、仮想・新を演じたことが
新コンプレックス解消に生きてくると予想しています。



・太一を見下す新?

20巻に続き、新の心の深い部分が描かれました。

「邪魔や 太一」
心の中でこう叫んでしまった新。

新は太一が卑怯なことを知っています。
新は太一に突出した才能があるわけではないことも知っています。

そんな太一が「あの部屋」で千早と対戦しています。
新の心の拠り所である「あの部屋」で
千早と情熱を分かち合ったのは新のはずなのに
そこには、太一が居座っています。

新はそこに居座る太一を邪魔だと言います。

このときの新の心からの叫びは
どのような気持ちがら出たものなのでしょうか。


ネット上の感想を見ると
①太一を見下していたために出た言葉
という意見や
②嫉妬心から出た言葉
という意見が多いようです。


これについて検討してみたいと思います。

まずは①見下していたから出たという考え方。

心の底では太一のことを見下していたのでは?
という新の自問をそのとおりだという考え方ですが
どうもしっくりきません。

なぜなら、新は「5歳相手でも手かげんせん男」です。
また、翔二に引き込まれた全国大会団体戦で
明らかな格下相手に誠意を尽くすために
えげつないほど本気で大逆転劇を起こしています。

このことから、かるたのうまさや才能の有無によって
新が相手を見下すということは考えづらいのです。

卑怯という点についても
太一に眼鏡を奪われた事件について
あっさりと「卑怯なやつやのー」と言い
「ほんでも ちょっとわかるわ……」と理解を示し
度量の大きいところを見せています。

この点をとってもやはり
太一のことを見下していたとは考えづらいのです。

ついでに理屈抜きで言ってしまえば
新って無意識でもそういうこと考えなさそうだし(笑)

そんなわけで、①見下したために出た言葉というのは
どうも違うように思います。


次に、②嫉妬心から出たという考え方。

吉野会大会において
予想していなかった千早と太一の決勝戦。

もともと千早と対戦してみたいと思っていた新にとって
太一に先を越されるとは寝耳に水だったかもしれません。

このままだと千早と情熱を共有するのは
自分でなくなってしまう。
太一になってしまう。
心の拠り所がなくなってしまう。

意識的ではないにせよ
新にはこのような危惧があったと思います。

嫉妬というのは、だいぶ近い気がします。

ただ、妬みの描写はなかったので
喪失することへの焦燥感という方が正確に思います。



・太一への思い

太一を見下していたのかもしれないと思い始めた新には
そのことがじいちゃんが亡くなったときと同じくらい衝撃だった。

ということは、裏返してみると
新にとってあのころの思い出はものすごく大事で
太一(+千早)はとんでもなく大切な友達ということですよね。

やっぱり太一のことが大好きでしょうがないんだなーと
このエピソードで逆に新の太一好きっぷりを確認してしまいました。



・逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ・・・

そのあと自分がたいした人間ではないと認識したところから
それでも逃げたらあかんと復活した新。

ここはもっと描いてほしかったなぁ。

新がかるたから逃げてはいけないと考える要因は
たくさんあるのだけど
そのうちの何が(複数でもいい)新の気持ちを
押し上げたのかが知りたかった。



・挑戦者は誰?

猪熊さんと恵夢ちゃんの試合の予想は難しい。

最近の目立ち方からして猪熊さんかなぁ?
くらいの予想しかできません。



原田先生と新は、新が勝つと予想します。

またまた邪道な予想ですが
名人の今後から推測しました。

周防名人は今年も名人になって、引退する
と公言しています。

しかし、物語的に
周防名人をこのまますんなり引退させるという筋は
ありえないでしょう。

そうすると、周防名人の引退は
どうやって阻止されるのか。

最も簡単なのは、原田先生か新が
周防名人に勝つこと。
ですが、原田先生にはその力はなさそう。
一方、新のかるたは周防名人から
テンション上がらないと言われている。

そうすると、周防名人に勝つのは無理だとして
負けても引退を引き留めるにはどうしたらよいか。

それは、周防名人の孤独を解消できる逸材が現れることです。

この点、原田先生のかるたでテンション上がるというのは
考えづらい。
「どっっしぇーー」や「じぇっっそーー」を見て
名人が「年をとってもこんな熱いかるたが取れるのか!!」
なーんて感動するところは想像できません。

一方、新は、テンション上がらないと言われているものの
名人戦までの間に変化する可能性を秘めています。

新がいまと変わって、テンション上がるようなかるたを
取れるようになればいいのです。

そして、どうすれば周防名人のテンションを上げられるかですが
予想している人も多いかと思います。
新がかるたのスタイルを自己流に修正することでしょう。

新のいまのかるたは「綿谷先生のかるた」です。

明確には示されていませんが
新はじいちゃんのかるたのスタイルを
完全に踏襲しているものと思われます。

じいちゃんのかるたは素晴らしいものでしょうが
ただ完全に踏襲するのではその先に進めません。

じいちゃんはじいちゃん、新は新です。
自分に合ったかるたのスタイルを探すべきです。

これは新の大きな課題の1つです。

漫画『ましろのおと』を読んでいる人には
ピンと来るものがあるでしょう。
あれと同じ話ですね。

あれ、話が逸れたかな。

というわけで、周防名人を心変わりさせられるのは、新。
なので、原田先生と新の対戦は、新が勝つ。



いやー21巻感想ほんとに長くなりました。
まだまだ語りたいことはあるのですが
ここらで切り上げます。

~間で揺れ動く人たち~




漫画『ちはやふる』

 1巻~4巻(一首~二十三首) 各話感想 目次

 5巻~8巻(二十四首~四十七首) 各話感想 目次

 9巻~12巻(四十八首~六十八首) 各話感想 目次


アニメ『ちはやふる』

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この記事へのコメント

桜庭
2013年08月21日 19:01
俺妹2期ナンナノ 1期はドタバタものでまだ済んだけど2期のあの最後(14-16話)なにがしたかったの 原作者、アニメ会社なんかわけわかんないわ とらドラの熱さ目指してたの 全然わかってないよ とりあえず兄妹どうこうじゃなくて気持ち悪さ全開 くだらない
神場@管理人
2013年09月08日 11:34
桜庭さん、はじめまして。

俺妹は観ていませんが、2期のラストは問題含みということですね。いつか観るときに思い出してみます。

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