抱えている問題それぞれ-ちはやふる24巻感想(2)

ちはやふる24巻感想その(2)です。

前回は、千早・新・太一、猪熊さん
そして詩暢ちゃんについて半分ほど書きました。
その1はこちら


今回は詩暢ちゃん立ち直った理由について
書くと予告しましたが分量と時間の都合で
次回に回します。

というわけで、詩暢ちゃんについては
お預けとさせてもらいまして
今日は名人戦の二人について。



・周防名人のモチベーション

周防名人がかるたを続けているモチベーションが明かされました。

周防名人のモチベーションは、兼子ちゃん。
年上のいとこか叔母さんか幼馴染のお姉さんか分かりませんが
同じく目に問題を抱えている女性です。

兼子ちゃんは周防名人にとって唯一心を許せる人物なのでしょう。

正兄ちゃんのマイペースさゆえになかなか説明をさせてもらえず
何度も「・・・もーいい」と匙を投げながらも
時間を見つけては正兄ちゃんに電話を架けて説明を試み
なんとか兼子ちゃんに生放送を観てもらおうとしています。

兼子ちゃんの方も周防名人のことを気にかけているようで
TVの前で生放送が始まるのを今か今かと待ち構えています。

24巻では色々と情報がちりばめられていたものの
明確に判明したことは、ほぼいま書いた点に尽きます。
物語が掘り下げられるのは25巻になるのでしょう。


25巻では、周防名人が兼子ちゃんに
名人戦を見せたがっている理由が描かれるはずですが
以下の点は隠れたポイントになるかなと思っています。

周防名人のこだわりが
名人戦を見せてあげたいという「献身」にあるのか
名人戦を見てほしいという「承認欲求」にあるのか
という点です。

ちょっと説明を加えます。

前者の「献身」として考えられるのは
①目に障害のある自分が活躍している姿を見せてあげて
目に障害を持つ兼子ちゃんを
勇気づけてあげたいという気持ちか
②小さいころから気にかけてくれた兼子ちゃんに
成長して頑張っている姿を見せてあげることで
(親孝行的な)恩返しがしたいという気持ち。

後者の「承認欲求」として考えられるのは
③小さい頃から自分を優しく導いてくれたお姉さんに
すごくなった自分を見てもらい
できたら褒めてほしいという気持ち。

「献身」「承認欲求」どちらの気持ちも
周防名人の中にあるとは思うのですが
どうも承認欲求(=観てほしい)がかなり強いように思えます。

というのは、TV(orニコニコ動画)で放送されない試合には
出場しないという周防名人の行動。

もし上記①②のように
活躍している姿、頑張っている姿を示したいのであれば
放送の有無にかかわらずたくさんの試合に出て勝利して
「久志くん(←呼び方は適当です)がまた勝った♪」
と思わせてあげればいいはずです。

なのに、名人戦しか出ていないということは
①②の気持ちはそこまで強くないのでは?と思えるのです。

それに対して、③の自分を見てほしいという気持ちは
名人戦にしか出ないという行動と合致しますよね。
見てもらえないんなら出ない、ということ。

というわけで、周防名人が兼子ちゃんに観てもらいたいのは
承認欲求から来ていると思うのです。


・周防名人の精神構造

ここからは承認欲求が強いという仮説のもとで
少し想像を交えて話を進めていきます。

承認欲求とは、誰かに認められたい気持ちのことです。

小さい子どもは親が世界の全てですから
親から認めてもらうことを最大の喜びと感じます。

承認してほしい相手は、小さい頃は特定かつ少数です。

そこから健全に成長していくと
友達、先生、その他の色々な人から認めてもらうことを
喜びと感じるようになっていきます。

承認欲求の相手が
特定少数から特定多数になっていくわけです。

周防名人はどうでしょうか。

周防名人には周りに慕ってくれる後輩がいて
それなりに愛されているにもかかわらず
それで承認欲求が満たされている様子はありません。

周防名人が見ているのは、そして、見てほしいのは
あくまで兼子ちゃんだけのようです。

周りの多数の人から認められることは興味がなくて
特定少数の人にのみ認められたい。
これ、ざっくり言ってしまえば、マザコンの精神構造です。

というわけで、このブログの結論。
名人・周防久志(推定26歳)はマザコンである!(笑)

色々と仮定や想像が入っていますが
大筋外れてないと思っています。


余談ですが
周防名人がA級選手にお菓子を配るのは
小さい頃にいい成績を取ったりすると
兼子ちゃんがお菓子(和菓子)をくれた
という体験に基づいているんじゃないかと思います。



・周防名人を引き留めるもの

周防名人はこの名人戦で勝利して引退する気まんまんです。
この先どう展開していくのでしょうか。

順当にいくなら、原田先生が何かを与えることによって
周防名人の引退を阻止するのでしょう。

しかし、周防名人の琴線に触れるなにかを
原田先生が提供できるのかどうか。
いまのところその兆しはありません。

ここ、うまく読者の納得が得られるオチをつけるの
結構難しいはずなので作者がどう料理するのか楽しみです。
(裏ワザとして、かわいい女の子が周り囲んで
 周防さんやめないでーって言えば引退撤回しそうですが 笑)



・えげつない戦法

原田先生に移ります。

1試合目と2試合目は周防名人が勝敗をコントロールし
3試合目は原田先生が捨て試合としたため
お互い本気の勝負は4試合目が初めて。

そしてこの4試合目で原田先生はなんと名人を翻弄します。

周防名人の死角といえる場所を特定し
自陣の死角で絶え間なく札移動したり
相手陣の死角に配置されるよう送り札を工夫したりと
名人の感じの良さを消しにかかり、これがハマりました。

千早から周防名人の弱点らしきものを聞き
医者としての知識や資料をフル活用して
その症状やかるたへの影響を徹底的に研究し
肉体的ハンデを的確に攻めたてる戦法です。

名人になる大切な夢をかなえるため
大切な人を喜ばせるためとはいえ
あまりにえげつない戦法!!卑怯!!
という風に感じた方もいるかもしれません。

ぼくは原田先生のそのスタンス
“あり”だと感じました。

例えばです、ボクシングの試合を終えた選手が
「あの野郎、おれが動体視力が弱いの知ってるくせに
ちょこまか動き回る戦法とってきやがった!汚ねえ!」
なーんて言ったら超カッコ悪いですよね(笑)

相手選手がそういう作戦に出たのは当然です。
仮に先天性の病気だったとしても
その世界に身を置いたからにはどこを攻められても仕方がない。
というか、弱点を知ってて攻めなかったら相手は甘ちゃんです。

先天的に動体視力が悪いのに
ボクサーになれたことは素晴らしいことですし
その努力を思えば感動すら覚えるでしょうが
だからといって、真剣勝負で弱点を攻めなかったら
それは手加減でしかありません。

ちはやふるに話を戻すと
原田先生が周防名人のハンデに遠慮する必要など全くないのです。

しかも周防さんは名人です。
最近かるたを始めた初心者ならともかく
研究され尽くされる立場にいる人間です。
その周防名人の弱点を攻めることに
なんら卑怯なところはないはずです。

とここまで断言していますが
なんの引っかかりも覚えないのかというと
感情的には、たしかに、障害を攻めていいのかな?
という気にはなります。

原田先生にも迷いはあったようです。

128首の「でも君は 最強の名人だ」というセリフ。
「でも君は」の前にどんな思いがあったのか
はっきりとは書いてありませんが
九割方、身体的なハンデを攻めて良いのか?という自問でしょう。
原田先生も少し迷いながら
しかしこの戦法を正しいと考えたわけです。



・定位置

むしろ気になったのは
原田先生が定位置から札を動かしまくっていること。

新との一戦で、定位置は動かさなければ
それだけ取れるようになる
と言っていたじゃないですか(22巻)

基本に忠実な骨太の戦法が勝つという
原田先生の姿勢がかっこよかったシーンです。
それなのに今回、周防名人の弱点を攻めるために
定位置から動かす戦法を取っています。

たしかに、そのセリフとセットで
「動かすときはちゃんと理屈をつけなさい」とも言っていて
今回、イヤなかるたを取ることという理屈がついたから
それで良しと言えないこともないんだけど
ちょっと自分のかるたを曲げすぎでは?
自分のスタイルが崩れているのでは?
という印象は否めない。

相手に合わせて自分のスタイルを少しアレンジすることは
良い戦法だと思うのだけど
スタイルを崩すレベルまで言っちゃうと
たいてい負けるものだよね~と思ってしまいました。



・誰もがなにかを抱えて

ネットで24巻の感想や過去の感想を読んでいると
この漫画ってたいてい対戦してるどっちかが
怪我とか病気とかテンション下がってたりとかで
全力でガチンコの試合ってほとんどないよね
という意見をよく見かけます。

たしかにそのとおりで
千早が風邪、突き指の前科あり。
詩暢ちゃんも風邪の前科あり。
猪熊さんは子育てに妊娠。
周防名人は目の病気。
原田先生は慢性的に膝が痛い。

だけどこれって実は普通のことで
スポーツ選手のインタビューとか聞くと
オリンピックに満身創痍で臨んでたりしますよね。
テーピングだらけだったり
痛み止め打ちながらだったり。

しかもかるたは30歳オーバーの人も普通にいるわけで
体力落ちて肉体的ハンデは増えるし
かるただけに時間割けないし
万全の状態なんてあり得ないと言っていいはずです。

原田先生は体の痛みと友達だと言っていますし
風邪や突き指について不運だという流れにはせず
自分が悪かったという姿勢です。

体調やハンデも含めて「いまの自分」であって
それを受け入れて戦っていくということが
21巻から(広く見れば16巻から)描かれ続けています。

つまり、万全の状態ではなかなか臨めないことが
織り込まれていると思うのです。

「少年漫画」と呼ばれるこの漫画において
お互いが万全の状態でのガチンコバトルが観られないのは
たしかにもどかしい気持ちもにもなるのですが
少年漫画よりは一歩か二歩、大人の漫画なんだという風に
読み方を変えてみれば納得できるのではないかと思います。



・その3へ

本当はここで終わると
記事の内容がタイトルにつながったところで締められて
ちょうど良かったのですが
詩暢ちゃんの話を丁寧に説明していたら
どんどん長くなってしまいました。

というわけで、24巻感想その3に続きます。
各巻感想がその3までいったのは初めて。

~抱えている問題それぞれ~




漫画『ちはやふる』

 1巻~4巻(一首~二十三首) 各話感想 目次

 5巻~8巻(二十四首~四十七首) 各話感想 目次

 9巻~12巻(四十八首~六十八首) 各話感想 目次


アニメ『ちはやふる』

 アニメ『ちはやふる』 各回感想 目次



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